返事も溺愛もキスのあとで
エレベーターが到着したのをみて乗り込むと、私はすぐに指先を動かしてメッセージを送る。


──『いま着いてエレベーターです。鷹哉さん、今日食べたいメニューはありますか?』

すぐに既読がついて、鷹がニッコリ笑っているスタンプと一緒に返事がくる。


──『ハンバーグが食べたい』

彼がクールな顔でパソコンと睨めっこしながら、こんな可愛らしいLINEを送っていることを私以外、誰も知らないだろう。

私しか知らない彼の可愛い一面に口元を緩めてしまう。

──『じゃあハンバーグにします!』

そう送ればまた返事がくる。


──『雛子。敬語はなしだよ』

スタンプの鷹が両羽をクロスさせてバツを作っている。

(このスタンプも鷹哉さん、そっくり)

ふふっと笑うと私はまた指先を動かす。

鷹哉さん呼びは慣れてきたが、敬語がなかなかやめられない。

──『寝る前にキス二回だな』

「……っ」

朝から心臓に悪い。

「そうだった……」

うっかり敬語を使うたびに、夜寝る前、彼に額にキスをされるのだ。

(ええっと……今日の夜はおでこに二回……)

私は誰もいないエレベーターで熱くなった顔を手のひらで仰ぐ。返信でキスのことに触れようかと一瞬思うが、やっぱり恥ずかしい。

──『ハンバーグお楽しみに』

それだけ送り、速攻で既読がついたのを確認すれば、もうオフィスの扉の目の前だ。

「よし、頑張ろう」

私は部下の表情を作ってから扉を開けた。
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