返事も溺愛もキスのあとで
「私が提案するのは──ポルチーニ茸とアルプス岩塩を使用したポテトチップスです」

同僚たちから、感嘆の声が上がる。

(つかみは良さそう)

聞き取りやすい声とスピードで、商品説明とターゲットとなる客層や狙いについて説明していく。

そして、ポルチーニ茸の原価や仕入れについて説明しようとした時だった。

「酷い!! こんなのあんまりです!」

(──え?)

当然、そう叫ぶと席を立ち、私を非難の目で見たのは姫原さんだった。

「皆さん聞いてください! あたし……、雛子先輩に企画取られました!」

「え……?」

(いま……何て言ったの?)

途端に会議室内がザワザワと騒がしくなる。

彼女はつかつかと歩いて前に来ると、プロジェクターに自分の企画書を映し出した。

「これ見てください!」


──『ポルチーニ茸とチェダーチーズを使用したポテトチップス』

その文言がすぐに目に飛び込んできて、私は目を見開いた。

「ポルチーニ茸って……」

(私と一緒……?!)

「酷いですっ、由羅が毎日毎日、頑張って作った企画を……っ、こんな風に盗んで自分のものみたいに……」 

姫原さんは鼻をすすりながら、目元を花柄のハンカチで覆う。

啜り泣く姫原さんを見ながら、私は先ほどのトイレでの言葉をすぐに思い出した。

(姫原さんが言ってた、奪うってこのことだったんだ)


私は両手の拳をぐっと握った。

(ゆるせない)

この企画は間違いなく私のものだ。

それなのに、いきなり私の企画書を自分のものだと言い、さらには私が盗んだなんてとんでもない。

(でも、一体どうやって私の企画を……?)

考えを巡らせるが、記憶の限りでは会社で盗まれるような隙は作っていない。

(もしかして、会社じゃない場所?)

私は心の中でハッとする。

守と住んでいたアパートに私物のノートパソコンを置いていたからだ。

(あ、引っ越しのとき……!)
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