返事も溺愛もキスのあとで


「はぁ……疲れた」

あのあと無事に午後の仕事を終えた私は、とてつもない疲労感から定時で会社をあとにした。

今日は姫原さんのせいで一日がとても長かった。

けれど、鷹哉さんの冷静な判断と機転のおかげで、企画を盗まれたのはむしろ私だとまわりに理解してもらえて心底ホッとした。

会議の後、ほかの同僚たちからも心配の声をかけてもらい、鷹哉さんからも上司として心配とねぎらいの言葉をかけてもらった。

(姫原さんが、あんなことするなんて)

守のことといい、企画のことといい、姫原さんのことは心から軽蔑する。

今日は彼女の主張の矛盾が露呈して、相当居心地が悪かったのか早退したが、明日からまた会社で顔を合わせなければならない。

私は駅に向かって歩きながら、大きなため息を吐き出した。

ストレスは大好きな家事で発散させるに限る。

「よし、買い物してご飯作ろ」

そう思い、スマホからハンバーグのデミグラスソースの作り方を検索しようとした時だった。

「──雛子」

「え……鷹哉さん」

聞き慣れた、低く甘さを含んだ声に振り返れば、わずかに肩で息をしている鷹哉さんと目が合った。
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