因縁の魔王陛下と聖女令嬢~溺愛の呪いが解けない~
レミアルは鋼鉄の甲冑を身に纏っていて、さらにエリーゼを抱きかかえていても全身にかかる重量など感じさせないほどに素早い。
あっという間にアゼルの前までくると、エリーゼの体をアゼルに渡す。今度はアゼルがエリーゼを『お姫様抱っこ』した。
「アゼルッ……!!」
エリーゼはアゼルの首に両腕を回して強く抱き返す。アゼルは表情を緩めてエリーゼの顔に頬を重ねるが、喜びよりも悲哀を含んだ赤い瞳を細める。
「エリーゼ……また痩せたな。もう貴様はどこへも行くな。永遠にオレの側にいろ」
「誰が……あんたの側なんかに……」
「本当は?」
いつものアゼルの問いかけにエリーゼが答えるよりも早く、カインの前方で待機していた騎馬隊が剣を構えて一斉に向かってくる気配に気付いた。カインが出撃の命令を下したのだ。
「なるほど、そういう作戦だね。いいですよ、アゼル陛下。力で決着をつけよう。どの道、僕に降伏する事になるけどね!」
カインの自信は、本物の最強の聖女であるセレンを味方にしているところからも来ている。そして聖力でエリーゼがセレンに勝てないのは事実であった。
アゼルはエリーゼを下ろして立たせると、迫り来る無数の軍隊を恐れずに一歩前に出る。
「エリーゼさえ取り返せば、こっちのものだ。貴様にオレと最強の聖女の力を見せてやる!!」
「……え?」
エリーゼはアゼルの堂々とした逞しい背中を見つめながらポカンとして立ち尽くす。
(あ、やば……アゼルは私が最強の聖女だって思い込んでるのよね……)
今さら説明しても遅いし、アゼルが事実を知ったところで状況は変わらない。アゼルはエリーゼの肩を抱き寄せて自分の腕と胸の中に収める。
「さぁエリーゼ、オレに力を!!」
「う、うん……」
エリーゼは流れの通りにアゼルの腰の後ろに腕を回して目を閉じる。そして念じる……ふりをした。正直、絶体絶命ではあるが、本当に聖女の力が発動する事を願うしかない。
しかし、やはり何も起きない。それなのに能力が発動したと勘違いしたアゼルが両手の拳を握りしめて雄叫びをあげる。
「うぉぉぉ!! きたぁぁぁ!! 力が漲るぞ!! これぞ最強の聖女、エリーゼの力だぁぁぁ!!」
「…………」
(なんていうか……アゼルがバカで本当に助かるわ)
当然ながらエリーゼは単に抱きついただけで能力は発動していない。今回もまたアゼルは愛という名の自己暗示で勝手に強化された気になっている。
しかし自己暗示も侮れない。アゼルは長剣を構えると一人で騎兵隊に向かって走り出す。一見、無謀ではあるが、単身で鮮やかに兵を切り捨てていく。
(すごい……アゼルって強化しなくても最強なんじゃ……)
その俊敏な身のこなしと、人とは思えぬジャンプ力。そして剣捌きの破壊力は、まさに遠い昔に存在した魔国の魔王の再来であった。
それに驚愕したのはエリーゼだけではない。次々と倒されていく自国の兵を目の当たりにするカインは、それ以上の衝撃を受けている。
「まさか、そんな……エリーゼ様は本物の聖女だったのか……!?」
呆然と立ち尽くすカインの横にセレンが来て、彼の腕に抱きついて寄り添う。
「お姉様に、そんな力が……そんなはずないわ、私が最強の聖女なのよ! カイン様、見せてやりましょう!!」
「え? あぁ、セレン、頼むよ!」
セレンの聖女の能力『強化』は、カインの戦闘能力を最大限にまで上昇させる。セレンとカインの体が黄金色に光り輝くと、その光はやがてカインの構える銀の長剣に集束していく。
黄金の剣を握るカインはセレンから離れると、目にも留まらぬスピードで駆け出す。一瞬にして、その刃先は無双状態のアゼルの目の前に迫っていた。
あっという間にアゼルの前までくると、エリーゼの体をアゼルに渡す。今度はアゼルがエリーゼを『お姫様抱っこ』した。
「アゼルッ……!!」
エリーゼはアゼルの首に両腕を回して強く抱き返す。アゼルは表情を緩めてエリーゼの顔に頬を重ねるが、喜びよりも悲哀を含んだ赤い瞳を細める。
「エリーゼ……また痩せたな。もう貴様はどこへも行くな。永遠にオレの側にいろ」
「誰が……あんたの側なんかに……」
「本当は?」
いつものアゼルの問いかけにエリーゼが答えるよりも早く、カインの前方で待機していた騎馬隊が剣を構えて一斉に向かってくる気配に気付いた。カインが出撃の命令を下したのだ。
「なるほど、そういう作戦だね。いいですよ、アゼル陛下。力で決着をつけよう。どの道、僕に降伏する事になるけどね!」
カインの自信は、本物の最強の聖女であるセレンを味方にしているところからも来ている。そして聖力でエリーゼがセレンに勝てないのは事実であった。
アゼルはエリーゼを下ろして立たせると、迫り来る無数の軍隊を恐れずに一歩前に出る。
「エリーゼさえ取り返せば、こっちのものだ。貴様にオレと最強の聖女の力を見せてやる!!」
「……え?」
エリーゼはアゼルの堂々とした逞しい背中を見つめながらポカンとして立ち尽くす。
(あ、やば……アゼルは私が最強の聖女だって思い込んでるのよね……)
今さら説明しても遅いし、アゼルが事実を知ったところで状況は変わらない。アゼルはエリーゼの肩を抱き寄せて自分の腕と胸の中に収める。
「さぁエリーゼ、オレに力を!!」
「う、うん……」
エリーゼは流れの通りにアゼルの腰の後ろに腕を回して目を閉じる。そして念じる……ふりをした。正直、絶体絶命ではあるが、本当に聖女の力が発動する事を願うしかない。
しかし、やはり何も起きない。それなのに能力が発動したと勘違いしたアゼルが両手の拳を握りしめて雄叫びをあげる。
「うぉぉぉ!! きたぁぁぁ!! 力が漲るぞ!! これぞ最強の聖女、エリーゼの力だぁぁぁ!!」
「…………」
(なんていうか……アゼルがバカで本当に助かるわ)
当然ながらエリーゼは単に抱きついただけで能力は発動していない。今回もまたアゼルは愛という名の自己暗示で勝手に強化された気になっている。
しかし自己暗示も侮れない。アゼルは長剣を構えると一人で騎兵隊に向かって走り出す。一見、無謀ではあるが、単身で鮮やかに兵を切り捨てていく。
(すごい……アゼルって強化しなくても最強なんじゃ……)
その俊敏な身のこなしと、人とは思えぬジャンプ力。そして剣捌きの破壊力は、まさに遠い昔に存在した魔国の魔王の再来であった。
それに驚愕したのはエリーゼだけではない。次々と倒されていく自国の兵を目の当たりにするカインは、それ以上の衝撃を受けている。
「まさか、そんな……エリーゼ様は本物の聖女だったのか……!?」
呆然と立ち尽くすカインの横にセレンが来て、彼の腕に抱きついて寄り添う。
「お姉様に、そんな力が……そんなはずないわ、私が最強の聖女なのよ! カイン様、見せてやりましょう!!」
「え? あぁ、セレン、頼むよ!」
セレンの聖女の能力『強化』は、カインの戦闘能力を最大限にまで上昇させる。セレンとカインの体が黄金色に光り輝くと、その光はやがてカインの構える銀の長剣に集束していく。
黄金の剣を握るカインはセレンから離れると、目にも留まらぬスピードで駆け出す。一瞬にして、その刃先は無双状態のアゼルの目の前に迫っていた。