因縁の魔王陛下と聖女令嬢~溺愛の呪いが解けない~

第17話 偽物の聖女の能力の覚醒

 アゼルとカインが一騎打ちをしている裏で、敵陣に突っ込む形となったレミアルの前にアーサーが立ちはだかる。
 白銀の甲冑で全身を覆う重装備のレミアルとは逆に、アーサーは軽装の黒い鎧。そして漆黒の長剣をレミアルの喉元に突きつけている。

「レミアル将軍、軍人としては惜しいが……ここまでだな」

 アーサーは光を宿さない灰色の瞳に冷酷さを滲ませている。前世の記憶がなく真面目な『戦バカ』であるアーサーはレミアルを敵としか見ていない。
 事前にレミアルは味方だと手紙で伝えたはずだが、根っからの軍人のアーサーは敵国の将軍を信用するはずがなかった。
 しかし、レミアルはアーサーと戦いたくない。やっと会えた運命の人なのだから。

「アーサー殿、私は戦いに来たのではない」

 レミアルは武器の長剣を手から離して地面に落とす。この行為は戦いを放棄したと同じ。そして両手で兜を持ち上げて外すとレミアルの素顔が現れる。
 ブラウンの美しいショートボブと、同色の優しい瞳。中性的で柔らかい顔立ちは軍隊の頂点に立つ無骨な将軍のイメージとは程遠い。

「どうか思い出してほしい。私の顔に見覚えはないか?」

 レミアルは心臓を高鳴らせながらアーサーの反応を待つ。まるで告白の返事を待つ乙女のように。
 アーサーはレミアルの素顔を初めて見るが、表情すら変えない。そして返答は短い一言。

「見覚えはない。趣味ではない」

 それを聞いた瞬間にレミアルの胸は堪え難いショックの痛みを受ける。アーサーは前世を覚えていないだけではなく、面と向かって『好みではない』と言ったからだ。
 レミアルはがっくりと膝を折って地面に両膝をついた。武器を捨て、兜を脱いだレミアルはもう戦えない。弱々しく唇を動かす。

「……もういい。私を斬るがいい」

 意気消沈したレミアルを冷たく見下ろすアーサーだが、その瞳に殺意はない。戦意を失った者にとどめを刺すほど非情ではない。
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