金髪悪魔の正体
「とりあえず暑いから中入って」


「ありがとうございます!」


「…鍵はかけなくていいから」


女性を部屋に招き入れることを気にしてくれているのか、気まずそうに付け加える


「はっ、はい」


急いで玄関を上がるとエアコンの涼しさがひんやりと気持ちよく、彼が長袖Tシャツを着ているのが納得の涼しさだ


というか今になって男性の家に、しかもあの金髪悪魔ベーシストの家に、不躾にもズカズカと上がり込んでいる状況を自覚して、急に恥ずかしさが込み上げてきた



部屋の中はシンプルだがキーボードやギターなど、バンド用の楽器が置いてある


壁にはロックバンドのポスターが2枚ほど貼ってあった



すごい

バンドマンの部屋って感じだ・・・



「テーブルにケース置いて、そこのソファ座って」


「はい!」


私がソファに腰掛けるのと同時、彼はテーブル前の床に胡坐をかく

長袖から覗く細くて白い指でそっとケースをあけると、丁寧にサックスを取り出した


「ここか」

曲がったキイをそっと親指で撫でてから、パカパカと押下する


「それ…治りますかね?」

「うん。多分治る」

「わ!よかった…!」



さっそく黙ってカチャカチャと楽器を触り始めた背中に、部屋にある楽器をキョロキョロと見渡しながら話しかけた


「伊倉さん、マーダーリヴァイアサンのベーシストなんですか?昨日のフェスでベース弾いてるの見ました」


「あぁ。あれはベースが辞めてサポート入っただけ。メンバーじゃないよ」



そう言ってテーブルに置いてあったバンドCDをサッと私の方へ差し出す


「魔陀亞…裏薔慰阿餐…すごい当て字…」

「あれ、ファンじゃないの?」

「はい、昨日初めて知りました。でも、伊倉さんが一番かっこよくて、まるで悪魔みたいでした!」


彼はサックスを触る手をピタリと止め、私を振り返って初めて口元に笑みを見せた



うわぁ・・・


かっこいい
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