毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
 顎を掴まれ固定されているリィラは片手を振り上げて抵抗するが、センティのもう片方の手に腕を掴まれた。

「大丈夫、痛くないよ。すぐに終わるからね。では、いただきます」

 センティの口調で天使のように微笑む魔物は、涙を拭ったその口でリィラの唇に深く重ね合わせた。

「……ふ……」

 声を封じられたリィラの唇から吐息だけが漏れる。恋人がするような甘いキスとは違う。荒々しく舌でかき混ぜて吸い上げている。

 センティはリィラの毒の唾液を吸い取っていた。舌で刺激を与えて唾液の分泌を促し、いやらしく水音を立てながら、リィラが枯れ果てるまで吸い尽くし喉に流し込む。

 長い口付けの後、充分に飲み尽くして満足したセンティの唇が離れてようやく解放される。

「ふぅ……美味い。最高の味だ……ん? 吸いすぎたか」

 魔物の人格に戻ったセンティが膝の上で抱いているリィラを見ると、腕の中で虚ろな瞳で荒い呼吸を繰り返している。

 ……力が入らない。まるで生気を吸い取られたみたいに。体内の毒素が奪われて薄まったせいだ。リィラには憎い魔物を睨みつける力も残されていない。

 センティはリィラが死なない程度に毒を吸おうとしたが、あまりの美味に我を忘れてしまった。
< 15 / 53 >

この作品をシェア

pagetop