毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
 尽きない疑問の答えを求めてリィラは上半身を起こして前のめりになる。自然とアレンの赤い瞳と距離が近付く。

 その時、いつの間にかアレンの後ろに立って腕を組んでいる銀髪の王子の姿がリィラの視界に映った。

「ちょっと、アレン。つまみ食いしちゃダメだよ? リィラちゃんは僕の餌なんだからね」

 不満そうに頬を膨らますゼンティの子供っぽい仕草は演技に見えない。恐ろしい事に完全にセンティになりきっている。
 ただ、リィラを餌扱いするところだけが、紛れもなく魔物だった。

 アレンはゼンティの方を向くと軽く頭を下げた。こうしてみるとアレンはかなり長身だ。

「心得ております、ゼンティ様。……では、失礼します」

 ゼンティの視線で心を読んだのか、アレンはすぐに退室した。代わりにゼンティがベッドの前まで歩み寄るとリィラの顔を覗き込む。

「リィラちゃん、もう起き上がれるかな? 僕と一緒に食事でもどうかな?」

 起き上がれなくしたのは誰なのか。にこかやかにディナーのお誘いをしてくるゼンティにリィラは怪訝な顔を返す。

 確かに眠ったら体は楽になった。体内の毒素が回復したようだ。しかし食事が喉を通る気がしない。
 目の前のゼンティは魔物なのだ。センティを食い殺した魔物で、目の前の男はセンティではなくゼンティで……寝起きの頭で考えていたら混乱してきた。

「……食事? 私が餌なんじゃないの?」

 なぜか、そんなツッコミのような質問だけが口から出てきた。さっき、この男に思いっきり口を吸われたのは一体何なのか。
 真面目に問いかけたのが余計におかしいのか、ゼンティは盛大に吹き出して笑う。

「あはは! さっき言ったよね、リィラちゃんは『嗜好品』なんだよ。主食じゃないの。食事は別で食べるよ」

 つまり私は気まぐれに吸われるタバコや食後のデザートのようなものなのかと、脳内ツッコミが止まらない。

「私も食事していいの?」
「当然だよ、リィラちゃんは大切な家畜だからね。大切に育てて食べてあげるよ」

 気のせいか、ものすごく下衆な言葉を爽やかに言われた気がする。
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