毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
 着替え終わって部屋を出ると、正面は広々としたホールになっている。大きな窓からの自然光で、朝は明るく開放感がある。

 窓際のソファにゼンティとアレンが並んで座っていた。リィラを待っていたのだろう。
 リィラが近付くと、ゼンティがニコニコと子供のように微笑んで迎える。

「これからヒメの散歩だから、リィラちゃんも一緒に行こう」
「ヒメちゃんの散歩?」

 ソファに座るアレンの膝の上にはヒメが乗っていた。子犬サイズだし大人しいので、ぬいぐるみを抱いてるようにしか見えない。

 しかし散歩に行くとは、ヒメは本当に犬みたいだ。ゼンティの魔物の姿は巨体の熊に似ていたが、歳の近い兄妹なのに差がありすぎる。

「私も一緒に行っていいの?」
「リィラちゃんは僕の携帯食だからね。ついでに外で朝ごはんを食べよう」

 あぁ、そういう意味か……とリィラのパープルアイが燻んだ。
 嗜好品、餌、家畜、携帯食……ゼンティに食べ物扱いされるのも慣れてしまった。

 獣魔王のゼンティ、獣魔姫のヒメ、近衛兵のアレン、携帯食のリィラは、4人一緒に城を出て城下町を目指して歩く。

 アレンが護衛なのは分かるが、彼は今日も鎧ではなく黒いスーツ姿。兵というよりSPかもしれない。
 ベスティア王国には獣魔族しかいないので外敵から身を守る必要もない。

「あぁ~いい天気! 人の足で歩く散歩も快適だね!」

 ゼンティが伸びをしながら幸せそうに朝日を浴びている。昨日まで獣の姿だったので今日の散歩は新鮮らしい。
< 27 / 49 >

この作品をシェア

pagetop