毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
 ヒメはアレンの足元に寄り添うように四足歩行をしている。首輪もリードもしてないが、普通の黒犬にしか見えない。

「……ゼンティも毎日散歩してたの?」
「うん。僕が獣の姿の時もアレンが散歩に連れてってくれたよ」

 ゼンティの獣の姿……あんな巨大な黒熊を連れて散歩する近衛兵とは一体……。
 しかも今のアレンは片手に武器ではなくピクニック用のバスケットを持っている。本当に近衛兵なのだろうか。

「ゼンティとヒメちゃんって、アレンさんとすごく仲いいのね」
「うん、アレンは僕たちの兄で家族だね。大好きだよ。ね~アレン!」
「……は。恐れ入ります」
「あ、せっかく人の体になったから腕組もうよ」
「……は。光栄です」

 なぜかアレンと腕を組むゼンティと、照れて顔を赤くするアレン。初々しいカップルみたいな謎の主従関係を見せられた。
 王と姫に挟まれて歩くアレンはモテモテの近衛兵あった。

 街路樹に挟まれた道を歩くと、やがて城下町に辿り着く。人通りも多くなり、飲食店や商店などが多く立ち並ぶ。
 リィラは賑やかな風景に目と口を大きく開けて感動しながら歩く。

「これが街なのね……! あれがお店? すごい……!」

 リィラは毒の里・ポワゾンの外で暮らした事がないので、生まれて初めて街を見る。

 さらに城下町を通り抜けると、木々に囲まれた広場へと入っていく。そこは公園らしく中心には色とりどりの花が咲く花壇がある。
 リィラはその美しい花々を遠目で見つめているだけで故郷を思い出してしまう。

(きれい……ポワゾンの花畑みたい)

 ただ、ポワゾンに咲く花は毒花なので紫一色。賑やかで色鮮やかなベスティア王国は、紫以外の色を知らない孤独なリィラにとって魅力的な風景であった。
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