毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
 リィラは一人でその場を離れて花壇の花を眺めている。

「リィラちゃん、何を考えているの?」
「あ……ゼンティ」

 リィラは隣にゼンティが立っていた事にすら気付かなかった。リィラは花の事を考えているのではない。そしてそれはゼンティに見透かされている。
 リィラは、さきほどの獣魔のカップルを見て、自身にも思う事があった。

「もし獣魔に子供ができたら……それって……」

 リィラはそこまで言いかけて止まってしまった。獣魔は生まれてから成人するまでは獣の姿。という事は、生まれた時は獣だ。
 たとえ人の体になっても、お腹に宿す子は獣なのだろうか……そんな疑問が頭から離れない。
 
「あはは! ちがうよ、人の体になったら人間と同じ。子供は人の姿で生まれてくるよ!」

 しかし、ゼンティとヒメは獣の姿で生まれている。という事は『成人したら人の体を得る』という決まりは近年に定められたと思われる。
 つまり、いずれは全ての獣魔が人の姿になる。そして森からベスティア王国へと移り住むという壮大な移住計画だった。

 ゼンティはリィラの背後から両腕を回して抱きついた。その両手はしっかりとリィラの腹部に触れている。

「僕のリィラちゃん。安心して身籠っていいんだよ。子供も大事に育ててあげるからね」
「……家畜、として……?」
「ふふ。毒を持つ子をたくさん産んでくれたら嬉しいなぁ」

 リィラは眉をひそめて唇を噛み締める。ゼンティが背後で満面の笑みを浮かべているのだと思うと悔しい。
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