毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
ゼンティの言う通り、もうリィラの体はいつ彼の子を身籠ってもおかしくはない。
リィラは体内に毒を持つ種族の最後の一人。ゼンティにとっては繁殖させて家畜を増やしたいだけなのだろう。
(やっぱり、こんな魔物なんか……!)
愛せるはずがない。リィラは体を隣のゼンティに向けると、右手を振り上げた。感情のままにゼンティの頬を叩こうとした……が、手が止まった。
自分を見下ろすゼンティの魔物の瞳は、王子だった頃のセンティの優しい色を含んでいるように見えて息を呑む。
「リィラちゃん。僕と結婚しよう」
「……は?」
唐突な求婚に感情が真っ白に吹き飛んでしまい、リィラの振り上げた手がゆっくりと落ちていく。
「僕はリィラちゃんにタダで餌になれとは言わない。センティにもタダで僕の体になれとは言わない。二人の願いは叶える」
「……だから私と結婚するの? 魔物なのに随分と律儀ね」
「それがセンティの願いだからね」
獣魔は、体となった人間の心に干渉され影響される……これはゼンティにすら抗えない自然の摂理。
ゼンティがリィラに注ぐ愛は、自身の感情ではなくセンティだった頃の名残でしかない。
「リィラちゃんの願いだって同じでしょ? 僕と結ばれたいんでしょ?」
「ちがう、私の願いは……」
リィラが愛したのはアディール王国の王子・センティ。しかしセンティはゼンティを愛してほしいと願った。
センティの願いを叶える事が自分の存在意義で罪滅ぼしになるのなら、目の前の魔物を憎まずに愛すべきだと心を決める。
(私の願いは、センティと結ばれること)
その願いはセンティと一致している。ならば、センティを支配した魔物ごと彼を愛する。
凛とした強さを紫の瞳に込めて、リィラは獣魔王の妃として生きる事を決めた。
「はい。私はゼンティと結婚します」
ゼンティは嬉しそうに微笑むと、片手でリィラの長い紫の髪に触れて指先で絡め取る。
「愛してるよ、リィラ」
「……ゼンティ、愛してる」
その言葉に愛なんてない。愛し合ってなんかいない。それでもセンティの願いを叶えるために二人は偽りの婚姻を結ぶ。
ゼンティに肩を引き寄せられて、自然と引き合う唇が重なる。毒は吸われない、初めての本物の口付けだった。
愛も誓いも指輪もない。式なんて挙げない。このキスだけで二人は婚姻の証を唇に刻む。
今、この瞬間にリィラは、若き獣魔王・ゼンティの正式な妃となった。
リィラは体内に毒を持つ種族の最後の一人。ゼンティにとっては繁殖させて家畜を増やしたいだけなのだろう。
(やっぱり、こんな魔物なんか……!)
愛せるはずがない。リィラは体を隣のゼンティに向けると、右手を振り上げた。感情のままにゼンティの頬を叩こうとした……が、手が止まった。
自分を見下ろすゼンティの魔物の瞳は、王子だった頃のセンティの優しい色を含んでいるように見えて息を呑む。
「リィラちゃん。僕と結婚しよう」
「……は?」
唐突な求婚に感情が真っ白に吹き飛んでしまい、リィラの振り上げた手がゆっくりと落ちていく。
「僕はリィラちゃんにタダで餌になれとは言わない。センティにもタダで僕の体になれとは言わない。二人の願いは叶える」
「……だから私と結婚するの? 魔物なのに随分と律儀ね」
「それがセンティの願いだからね」
獣魔は、体となった人間の心に干渉され影響される……これはゼンティにすら抗えない自然の摂理。
ゼンティがリィラに注ぐ愛は、自身の感情ではなくセンティだった頃の名残でしかない。
「リィラちゃんの願いだって同じでしょ? 僕と結ばれたいんでしょ?」
「ちがう、私の願いは……」
リィラが愛したのはアディール王国の王子・センティ。しかしセンティはゼンティを愛してほしいと願った。
センティの願いを叶える事が自分の存在意義で罪滅ぼしになるのなら、目の前の魔物を憎まずに愛すべきだと心を決める。
(私の願いは、センティと結ばれること)
その願いはセンティと一致している。ならば、センティを支配した魔物ごと彼を愛する。
凛とした強さを紫の瞳に込めて、リィラは獣魔王の妃として生きる事を決めた。
「はい。私はゼンティと結婚します」
ゼンティは嬉しそうに微笑むと、片手でリィラの長い紫の髪に触れて指先で絡め取る。
「愛してるよ、リィラ」
「……ゼンティ、愛してる」
その言葉に愛なんてない。愛し合ってなんかいない。それでもセンティの願いを叶えるために二人は偽りの婚姻を結ぶ。
ゼンティに肩を引き寄せられて、自然と引き合う唇が重なる。毒は吸われない、初めての本物の口付けだった。
愛も誓いも指輪もない。式なんて挙げない。このキスだけで二人は婚姻の証を唇に刻む。
今、この瞬間にリィラは、若き獣魔王・ゼンティの正式な妃となった。