毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~

第5話 ゼンティの復讐

 獣魔王ゼンティの妻となったリィラだが、それは妃という肩書きを得ただけであり『餌』扱いは変わらなかった。
 リィラ個人の部屋は与えられずに、今朝もゼンティの寝室のベッドの上で目覚める。

「リィラちゃん、おはよう。朝だよ」
「ん……」

 目は開いても、リィラの体は朝からだるく重い疲労感で身動きするのも辛い。
 同じ毛布の中で微笑む魔物は毎晩リィラの毒を吸い、体も餌のように食べ尽くしていた。

 ようやくリィラが起き上がると寒さに曝された全身の肌を震わせるが、服を着る前にゼンティが唇を重ねてくる。

「ふぅ……最高だよ。朝の一服は美味しいなぁ。もう一回吸っていい?」
「ちょ、も、だめ……ゼンティ、いい加減にして……」

 タバコのようにリィラの毒を吸う行為も日常になっていたが、イチャついているようにしか見えない。

 さらに、困った事は朝だけではない。リィラの毒を吸い続けていたゼンティに最近、異変が起き始めた。

 ゼンティは執務室の机の上に両足を乗せて椅子に踏ん反り返っている。

「あぁ~リィラ吸いてぇな。あいつどこ行きやがった?」

 信じられない態度と口調だが、これはゼンティのセリフだ。机の横に控えていたアレンは慣れた様子で動き出す。

「……お連れしてきます」
「急げよ。ったく、餌の分際で遊んでんじゃねぇよ」

 ゼンティは毒が吸えないと禁断症状が出るようになった。その時だけは本来の魔物の人格の乱暴な口調に戻ってしまう。

 毒を吸い過ぎたゼンティは、もはやリィラ依存症。これ以上悪化する前に禁煙……ではなく禁毒が必要かもしれない。
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