毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
 朝食を終えると、二人は食堂を出てそのまま別の部屋へと向かう。
 見上げるほどの大きな扉の前に連れて行かれたが、リィラはここに来るのは初めてだった。

「ここは何の部屋なの?」
「謁見の間。玉座のある部屋だよ。中で両親が待ってるから」

 扉の両側に控えていた二人の兵が、重い銀色の扉を開けていく。

 扉が全開となり道が開かれると、ゼンティとリィラは真っ直ぐに伸びた赤い絨毯の上を並んで歩く。
 まるでヴァージンロードのようにゆっくりと進む二人の先には、ソファのような横長の赤い椅子。
 二人掛けの玉座には、王と王妃らしき人が並んで座っている。

(あの二人がゼンティの両親……? なんで玉座に?)

 リィラは前方だけを見て歩きながらも色々と不思議に思う。今のベスティアの国王はゼンティなのに、なぜ両親が玉座に座るのか。

 やがて玉座の前まで来るとゼンティと共に立ち止まる。
 同時にリィラは思わず目を丸くする。父も母もゼンティと同じく銀髪で赤い瞳。驚くほどゼンティにそっくりな容姿であった。

 ゼンティは今日も天使のような笑顔で両親に向かい合う。

「父さん、母さん。彼女が僕のお嫁さんだよ」
「あ、リィラです。ゼンティの妻……です。初めまして……」

 リィラは慌ててお辞儀をして名乗る。再び顔を上げると、父親の眩しい笑顔と目が合った。
 黒いスーツに黒いマント。容姿はゼンティをそのまま少し老けさせた感じだが、その笑顔は若々しい。

「おぉ、君がお嫁さんだね? 私はゼンティの父、ベスティだ!」

 妙に明るく軽い口調でリィラは反応に困ってしまう。
 視線を泳がせていると、ベスティの左隣に座ってニコニコとしている母親と目があった。

「あらぁ、うふふ、可愛いお嫁さんで嬉しいわぁ。私はゼンティのお母さん、スティアよ。よろしくね~」

 スティアの方も独特な口調で妙に明るい。そして、やはり容姿はゼンティにそっくり。
 黒のシンプルなロングドレスで、長い銀色のロングヘア。ベスティにぴったりと寄り添う姿には妖艶さがある。

 ゼンティの年齢から考えて両親は40代くらいだろうが、見た目も口調も若々しい。
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