毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~

第7話 偽りのセンティ王子

 ベスティア王国を出発したリィラ、ゼンティ、アレン、ヒメの4人は、馬車に乗ってアディール王国を目指す。

 馬車を御するのはアレン。ゼンティはいつも通りの王子様の服装をしているが、リィラは質素なベージュのワンピース姿。
 事前にゼンティから言われたのは、リィラは一般市民のふりをするという事だけ。毒を持つ種族である事は秘密にする。

 リィラとゼンティは馬車の中で並んで座り、目的地への到着を待つ。リィラの膝の上にはヒメが乗っている。

「ゼンティは王子のふりをするのに、その瞳の色はどうするの?」

 ゼンティの瞳の色は魔物特有の赤色。しかしセンティ王子の瞳はスカイブルーだった。

「瞳の色は変えられるよ。ちょっと力を使うけどね」

 ゼンティが瞼を閉じて再び開けると、一瞬にして瞳の色が赤から青へと変わった。
 瞳の色まで変えられるとなると、センティ王子と全く見分けがつかない。
 すると馬車が停車して、アレンが座席の方に顔を出した。

「アディールの城下町に着きました。ここから先はお歩きください」

 そう告げるアレンの瞳の色も赤色から茶色に変わっていた。これが人間だった頃のアレンの瞳の色なのだと分かった。

 アディールの城下町の手前で馬車を降りて、そこから4人は徒歩で王城を目指す。
 ここまで乗っていた馬車を引く魔物は、4人を降ろすとベスティア王国へと帰っていく。

 アディール王国の城下町の賑わいは、希少種の獣魔が住むベスティア王国の比ではない。
 リィラは緊張を忘れて気分が上がってしまい、人混みを避けながら周囲の街並みを見回して歩く。
 ゼンティは前方に辻馬車を見付けると笑顔になる。

「あ、丁度いい馬車があった。お~い!!」

 ゼンティが一人で駆け出して御者に話しかけると、御者の男性は驚いた顔をして頭を下げた。王子が声をかけたのだから当然の反応だ。
 王子の権限で辻馬車に全員で乗り込むと、行き先を王城に指定する。
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