毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
 小さな丸いテーブルの上には二人分の紅茶が用意されている。すでにレンティが席に座ってリィラを待っている。

「ようこそ、リィラさん。あなたとお話がしたくて。さぁ、どうぞお座りになって」

 言われるままに、リィラはレンティの向かい側の席に着席する。
 アレンは退室せずにレンティの後ろに立って控える。それを向かい側で見たリィラは不思議に思った。

「あれ? アレンさんって……」
「アレンは私の専属執事ですのよ。口は堅いので気兼ねなくお話くださって結構ですわ」

(アレンさんってレンティさんの執事だったの? 知らなかった……)

 どちらかと言えば、アレンはセンティの執事かと思っていた。アディール王国の情報を何も知らないリィラは意外な関係に驚く。

「ねぇ、リィラさんはおいくつでいらっしゃるの?」

 レンティは上品な所作で紅茶を口にしてから真っ直ぐにリィラを見据えた。センティと同じスカイブルーの瞳の引力に吸い込まれそうになる。

 毒の里で一人で生きてきたリィラにとっては貴族とのティータイムなんて初めてで、ティーカップを持つ手が震えてしまう。

「18歳です……あ、18歳だと思います、たぶん」

 リィラは記憶喪失の設定なので、年齢を断言してはまずいと思って曖昧に言い直した。

「センティお兄様は20歳、私は17歳なので、私よりはお姉様ですのね」

 どうやらレンティはリィラに探りを入れている様子だった。それは当然だろう。見ず知らずの記憶喪失の女が兄の結婚相手だと言われたのだから。

 それはリィラも同じで、レンティの情報をなるべく多く入手したい。ゼンティは何も教えてくれないのだから。
 まずはセンティとレンティは3歳違いの兄妹だと分かった。

「リィラさんの髪と瞳の紫色……まるで毒の色みたいですわね」
「……え?」

 リィラはまさか、髪と瞳の色で毒を連想されるとは思っていなかった。確かに珍しい色ではあるが、そう思ったとしても普通は口にしない。

 その意図を考えた時に、リィラの防衛本能が働いて警戒心を強める。レンティはリィラを敵視しているかもしれないと。
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