毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
 気付くとヒメが足元にいて、可愛らしい赤い瞳でリィラを見上げている。

(ゼンティに相談した方がいいかな……)

 毒の研究。これはきっと重要な情報に違いない。しかしゼンティに話して敵だと判断されれば、ドックは躊躇いなく殺されてしまうだろう。
 ドックはリィラの秘密を知ってしまったのだ。それだけでゼンティはリィラを守ろうとするかもしれない。

 まだ何も起きていないのだから、ゼンティに相談するのはもう少し様子を見てからにしようと考えた。

 ……しかし、ゼンティはドック以上に鋭い。

 リィラがヒメとの散歩を終えて、城内のゼンティの執務室へと入る。
 ゼンティはリィラの姿を見るなり、椅子から立ち上がって壁に押し付ける勢いで迫る。

 毒を吸いたいのだろうと思ったリィラは素直に大人しくゼンティの口付けを待つ。ここで禁断症状を出されても困るからだ。

 だが、ゼンティはリィラに普通に軽く口付けただけで、それ以上の事はしなかった。

「ねぇ、リィラちゃん。僕に隠し事してない?」
「…………!」

 どこで気付かれてしまったのだろうか。魔物の赤い瞳は人の心を読む力でもあるのだろうか。
 何も答えないリィラに、ゼンティは不満そうに口を尖らせる。まるで子供だ。だがリィラも同じ表情を返したくなった。

「ゼンティは私に何も教えてくれないくせに」

 リィラの拗ねた顔が可愛くて、ゼンティは思わず頬が緩んでしまう。

「あぁ、そうだね。じゃあ言ってみなよ。何を教えてほしい?」

 ゼンティが素直に折れてくれるのは珍しい。基本的にリィラの願いは叶えるゼンティだが、魔物の人格の方だったら、こうはいかない。
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