毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
 ゼンティがどこまで話してくれるのか分からない。でもリィラには確かめたい真実がいくつも思い浮かぶ。

「じゃあ、ゼンティが復讐したいのは、毒殺を仕組んだ人たち……?」
「いや。そいつらはもう殺した。だから僕は、そいつらの意志を継ぐ人間に復讐する」

 おそらく、それはレンティの事だろう。だがリィラはその名を口に出してはいけないと思った。

 魔物の大量毒殺を実行させたのは、おそらく先代のアディール国王と王妃。センティとレンティの両親だ。
 レンティは両親は死んだと言っていた。獣魔の復讐によって殺されたのだろう。
 そうなると両親を殺されたレンティは、獣魔への復讐の目的で毒を開発していると思われる。

(ゼンティの復讐と、レンティさんの復讐……私は、どうしたらいいの?)

 復讐と復讐。リィラは二人の復讐の狭間に立たされている。
 リィラはセンティの遺志を継いでレンティを守りたい。だがそれは、レンティを殺したいゼンティへの裏切り行為となる。

 センティとゼンティ、どちらの願いを叶えるべきなのか。リィラは自分がどうしたいのか、その答えを出せない。

「あぁ、でも王子……僕の今の体ね。こいつは平和主義だから、毒とか復讐には反対してたよ」

 ゼンティが墓地の山から離れて振り返ると、後方に控えるアレンと目が合う。
 リィラもゼンティに合わせて振り返ると、後方のアレンのさらに後ろに信じられない光景を目にした。
 いつの間にか、周囲を何十人もの武装した兵士に囲まれていた。剣を構え、今にも斬りかかってきそうな空気に息を呑む。

 それでもゼンティは動じない。殺気立つ兵士たちに向かって微笑んだ。

「ふふ、ほらね。だから僕、ずっと命を狙われてるんだよね」

 その言葉を合図に、兵士たちの剣先が一斉にゼンティに向かって襲いかかってくる。
 狙いはゼンティ一人らしく、アレンとリィラには目もくれない。
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