毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
 ドックは立ち上がると、ズボンの尻についた砂を払ってから再びリィラに笑顔を向ける。こうして見るとゼンティよりも身長が高い。

「お時間があるなら地下の研究室を見に来ませんか?」
「……私が見に行ってもいいの?」
「当然です。未来の王妃様に隠し事なんてしませんよ」

 そうは言うが、未来の王であるゼンティには秘密にしていると思われる。どちらかと言えばドックはレンティ側の人間だ。

 リィラを誘ったのは何か目的があるに違いない。そう思ったリィラは、誘われるままに城の裏口へと向かって歩き出す。

 地下へと続く石の階段を下ると、施錠された扉をいくつも開けては閉めての繰り返しで通り抜けていく。
 ここは元は地下牢であり、今は秘密の研究をする場所なので厳重に戸締まりをするのに適している。

「ここが研究室です。毒の研究、開発、製造を行っています」

 薄暗い室内に実験台のような横長のテーブルが1つ。その上には試験管やらビーカーやら置かれていて理科の実験室のようだ。

 周囲の棚には薬品の入った瓶が無数に並んでいる。そして、何かの白い粉が大量に入った大きなビニール袋が床に置かれていて、やけに目立つ。

 何よりも、この部屋で毒を製造しているせいか、リィラは馴染み深く懐かしい匂いを感じた。毒物を扱う割には地下室は換気が悪い。

「ここって秘密の場所なのよね。どこまで質問して大丈夫?」
「何なりとどうぞ」
「何のために毒を開発しているの?」

 リィラは最初から核心に迫った。これはゼンティから聞いた話の答え合わせでもある。
 ドックが真実を語るかは分からないが、ゼンティの話の通りであれば、魔物を大量毒殺する目的だろう。

「その答えは私がお話しますわ」

 どこからか聞こえてきた女性の声に驚いて、リィラは壁の方に向いて目を凝らす。
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