毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
 暗がりで見えなかったが、実験台の横の壁際に女性が立っていた。ずっと気配を消していたらしく、壁に背をつけて腕を組んでいる。

 その女性がこちらに近付いてきた時に、リィラはそれが誰であるかを認識した。

「レンティさん……!?」

 レンティはドックと同じく、医師が着る白衣を黒く染めた黒衣を纏っている。長いウェーブの銀髪も結んでいて、普段の華やかさはない。
 まるで別人格のように、その表情や声色にも闇を感じる。ここでは王女ではなく研究者の顔をしている。
 レンティはリィラの正面で足を止めて堂々と向かい合った。

「毒の開発の目的は『復讐』ですわ。両親を殺した魔物への仇討ちですわね」

(やっぱり……)

 予想通りの答えなのでリィラは驚かない。しかし、このままではゼンティの仲間である魔物が再び毒殺されてしまう。

 レンティにとっては、本来は魔物に殺された両親とアレンの仇討ちなのだろうが、アレンは生きていたので今は理由に含まれない。

 どうするべきかとリィラが黙って思案していると、レンティは毒について語り続ける。

「毒を作るには毒が大量に必要なのですわ。毒を好む魔物だって大量摂取すれば逆に毒になりますもの」

 それは言えるかもしれない。毒を好むゼンティだって、リィラの毒を摂取しすぎて依存症と禁断症状を起こしている。

 しかし、なぜリィラに毒の製造方法まで説明するのだろうか。その意図を考えた時に、リィラは恐ろしい予感がした。

「研究の結果、人毒を高濃度にした毒が魔物に効果的だと分かりましたの。人毒とは、毒の種族の体内に流れる毒ですわ」

 リィラはハッとして周囲を見回す。さっきから気になっていた、ビニール袋の中に詰められた大量の白い粉。これが何なのか……気付き始めてしまった。
< 67 / 97 >

この作品をシェア

pagetop