毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
 気付けば唇が自然と動き出して、今の願望を言葉で伝える。

「ゼンティ、お願い。抱いて……」
「いいよ。リィラちゃんの願いは叶える」

 ゼンティはリィラの身体を抱き上げると、寝室まで運んでベッドの上に降ろした。
 自分のシャツの前ボタンを外しながら、ゼンティはいつもの意地悪そうな笑顔で付け加える。

「今、すごくお腹空いてるからさ。優しくできないと思うけどね」

 ……優しかった時なんてあっただろうか。
 ゼンティに抱かれながらも、リィラは悲しみに満ちた身も心も彼の熱で満たされていくのが心地よく感じた。

 今思えば、もしセンティ王子が殺されずに人間のままで結ばれたとしても、リィラとは決して触れ合う事ができない。
 体内に毒を持つリィラは人間にとって有毒。センティとはキスをする事も、交わる事も、子を成す事もできない。

 皮肉にも、センティ王子が殺されて魔物のゼンティとなった今だからこそ、こうして唇も肌も重ねる事ができる。

 まるでゼンティと結ばれる事が運命であるかのように。今は愛する獣魔に自分の毒を捧げて悦ばせたいとすら思う。

「……ゼンティ、愛してる」
「うん。リィラちゃん、愛してるよ」

 今、偽りの愛が本物の愛に変わったのかもしれない。
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