毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
 リィラは昼下がりの休憩時間になると、いつものように中庭へと出る。

 いつもこの時間は花壇の前に座ってドックが休憩している。必然的に二人は顔を合わせる事になる。

 だが、リィラはドックにも警戒している。仕事上とはいえ、レンティと共に毒を研究・開発している彼には迂闊な事を言えない。
 しかしドックの様子がいつもと違うような気がして、リィラは不思議に思って彼に近付く。

「ドックさん、こんにちは。どうしたの? 体調が悪いの?」

 蹲るように顔を伏せていたドックが顔を上げると、その顔色には血の気がない。

「……リィラ様。僕は結婚式に行けませんが……」
「え?」

 なぜ急に結婚式の話をするのだろうか。ドックの言いたい事が分からない。

「結婚式のお食事は、絶対に口にしないで下さい」
「え、どうして?」
「それには、毒、が……」

 最後まで言い終わる事なく、ドックはその場に倒れた。

「ドックさん!? どうしたの? しっかりして! 誰か!!」

 リィラの叫びは中庭の周辺に響き渡っているはずだが、誰もこの場にいないし来ない。
 唯一、その声を聞いたヒメが全力で走り、すぐにゼンティを中庭へと連れてきた。

「リィラちゃん、どうしたの?」
「ゼンティ! ドックさんが急に倒れて……誰も助けに来ないの」

 ゼンティはドックを見なくても勘付いた。この状況が何を意味するのか。そして誰の仕業なのかを。

「……致死量の毒を注入されているね。もう助からないよ」
「そんな、ドックさんが……どうして!?」

 ゼンティには毒の匂いだけで、使われた毒の量もドックの状態も分かる。
 それがなくても、誰が仕組んだ事かなんて簡単に分かる。毒の製造を行っていたのは、レンティ以外ではドック一人。

 毒の製造に成功するか、もしくは失敗に終わればドックはもう不要。どの道、口封じの目的でレンティに殺される運命だった。

「ゼンティお願い、ドックさんを助けて!」

 仕事上、レンティに毒の製造を強要されていただけのドックに罪はない。レンティに弱みを握られていた可能性もある。
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