冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 ガチャリとドアが開く音で視線をそちらに向ける。すると三神さんは軽く目を見張った後、すぐに眉をひそめた。

 私がまだ帰っていないことに対してだろうけれど、そんな嫌そうな顔をしなくても……。

 昼過ぎにやってきたが気づけば夕方になっていた。

 彼の視線はリビングに注がれ、彼の口が開く前に私が説明する。

「場所は動かしていませんよ。乱雑に置かれていた書類や本をそろえただけです部屋が散らかっていると集中力が落ちちゃいますよ?」

「余計なお世話だ」

 ぶっきらぼうに返すと、三神さんは冷蔵 庫に歩を進める。

「なにか飲むか食べるか、されますか?」

「必要ない」

 きっぱりと拒絶されるが、怯まずに用件を伝える。

「食事、用意しておきました。私は作っていませんので、よかったら召し上がってください」

『そもそも他人が作ったものは食べたくないんです。なにが入っているかわからないので』

 ホテルでの発言もあったため、栄養バランスを考えながら調理済みのものをここに来る途中スーパーで買いそろえて、メニューを完成させた。

 家政婦としては失格かもしれないが、三神さんに食べてもらうのを最優先するべきだ。

「食べない、と言ったはずだが?」

 しかし、私の気遣いなどまったく効果がないようだ。不機嫌そうに返されるが、あえて気づかないふりをする。

「食べてください。嫌なら食べられるものを教えてください。浩明さんに三神さんがきちんと食べて眠るのを見届けるように言われているんです」

 三神さんは、ポケットから四角いケースを取り出し、白いタブレットを手のひらにいくつも出した。わざとなのか習慣なのか、それを口の中に放り込んで噛み砕く 。

 たぶんサプリだろうけれど、あんなふうに噛み砕いていいのかな。

 歯牙にもかけない彼に、私は言うべきことは主張する。
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