冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 ところがリビングに通され、目を疑う。

 テーブルの上や床などいたるところに本やノート、資料などが積み上げられている。ここはどこかの研究所か資料室か。汚いというより、物があふれている。

「これは……」

「どれも必要なものばかりなんだ。それぞれ意味があってまとめているから勝手に動かさないでほしい」

 最初に釘を差され、言葉に詰まる。

「食事も必要ない。どうせ食べない」

「だ、だめです。そのために私はここに来たんですから」

 さらに畳みかけられそうになり、慌てて返す。

「少なくとも君が作ったものは食べない」

 きっぱりと言い切られ、こちらが返事をする前に彼は背中を向けた。

「本を読んでいる最中だったんだ。邪魔が入って中断せざるを得なくなったから続きを読んでくる」

 ちょっと待って、邪魔って私?

「適当に帰ってくれ。それじゃ」

 尋ねる間もなく彼の姿は廊下に消えていった。ひとり残された私は呆然とするしかない。

 これは……手強すぎる。

 浩明さんがお金を払ってでもなんとかしてほしいと思うのも理解できる。一方で彼をなんとかしようとするのは無理なのでは?

 結菜や浩明さんから頼まれたとはいえ、当の本人の拒絶っぷりからすると、あまり勝手なことはできない。とはいえそのまま放っておくのも……。

 ふうっと息を吐いて、部屋を見渡す。

 勝手に片付けるわけにはいかないと思いながらも、依頼主の浩明さんからはある程度強引に片づけや料理などを進めてほしいと先に言われていたので、三神さんの意思を汲みつつ自分できる最低限のことをした。
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