冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 じっと成明さんを見つめていたら、彼の整った顔が近づけられ、まるでそうすると知っていたかのように私はごく自然に目を閉じた。唇に温もりを感じ、胸の中の孤独感が溶け、温かいもので満たされていく。初めてなのに、柔らかな感触が心地いい。

 唇が離れたのと同時にそっと目を開けると、彼の瞳がしっかりと私を捉えていて、途端に羞恥心に襲われる。

 キスをしたのだと実感したら、成明さんの顔が見られなくなってうつむく。いい大人で、しかも夫婦なのに大袈裟な反応をしている自覚はある。でも情けないことにキスさえ経験したことがなかった。

 だから、こうして口づけを受け入れた自分に驚く。

 そ、そもそもどうして成明さんは私にキスをしたの?

 打って変わって心臓がバクバク音を立て、思考回路が上手く働かない。

「あ、あの……」

 声を上げると腕の力を緩められ、彼がこちらをうかがっているのが伝わってきた。

「その、どうして……誕生日、プレゼントですか?」

 キスした理由を頭の中であれこれ煮詰め、結論づける。そのまま声にしたが、完全に聞き方を間違えた。後悔にじわじわ襲われていると、小さく噴き出した気配を感じた。反射的に顔を上げると、勘違いではなく成明さんが笑みを噛み殺している。

 見当違いなことを言ってしまった、とパニックを起こしそうになったら彼が額をこつんと重ねてきた。

「プレゼントになるのか?」

 その問いかけをどう受け止めていいのかわからない。たかがキスが? 単純だと思われた? ……それでもいい。

「……はい」

 私は素直に頷いた。好きな人に触れられ、キスをされるのはやっぱりうれしい。
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