冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 すると、彼の大きな手が頬に添えられ再び唇が重ねられた。今度は口づけられてから目を閉じて成明さんを受け入れる。

 唇をただ重ねるのがキスだと思っていたけれど、幾度となく角度を変え、慈しむように合わせられる彼の唇に、愛されているような錯覚が起きる。

 ちゅ、ちゅっと軽いリップ音が響き、次第にもっとして欲しいと願ってしまう自分がいた。その気持ちに驚き、軽く顎を引くとキスは終わりを迎えた。

「もう、十分です」

 震える声で伝えると、頬に唇が寄せられる。

「遠慮しなくていい」

 偶然なのかわざとなのか。低い声で耳元で囁かれ、ぞくりと体が震えた。

「成明さん……酔ってますか?」

「酔ってるのは小夜の方じゃないか?」

 質問に対し逆に聞き返され、真面目に考える。酔ってない、はずだ。

「酒、飲めるんだな」

 自問自答していたら、成明さんが意外そうに呟いたのでつい苦笑する。

「そんなに強くないですけど……」

 逆に、成明さんは強そうだ。そう言うとしたら頭を撫でられる。彼に触れられるのは心地いい。

「やっぱり、酔っているのかもしれません」

 ぽつりと漏らし、意を決して自分から彼に抱きついた。自分とは違うしっかりとした体つきは密着するとさらによくわかる。私よりはるかに高い背丈、厚い胸板と広い背中は大人の男性そのものだ。

「少しだけ、こうさせてください」

 自分の希望を口にできたのはお酒の力もあるのかもしれない。応えるように成明さんは私を抱きしめた。

「小夜が望むのならいくらでも」

 誕生日だから? 成明さんも実は酔っているの? 理由はなんでもいい。

 こうして彼の腕の中にいて、今までで一番幸せな誕生日だと思えるから。
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