冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
『両親に、結婚の報告をしにいきたいです』

 成明さんが出かけようと言ったのはそういう意味ではないと理解しつつ今、私の一番行きたいところを正直に告げた。

 本当はひとりで来ようと思っていたけれど……。

『そうだな。俺もご両親に挨拶しておきたい』

 成明さんはすんなりと受け入れてくれた。

 冷たい風が頬を掠め、耳が痛くなりそうだ。けれど空は澄んでいて雲の位置が随分と高く感じる。

「こっちです」

 管理事務所で挨拶をし、成明さんを案内するように多くのお墓が並ぶ通りを迷わず進んでいく。ややあって足を止め、墓前にゆっくりと進んだ。もう何度、ここに足を運んだだろう。

 お墓に供える花は白をベースに淡いピンクのカーネーションを入れてもらった。完全に母の好みを意識したものだが、母が喜べば父もきっと嬉しいだろう。

 成明さんに手伝ってもらいてきぱきと花を供える。

「ここに両親が眠っているんです」

 見ればわかる気もするが、つい湿っぽくならないように説明した。

「先に父がここに入って……小さい頃から母と父のお墓参りによく来ていました。まさか、母がこんなにも早く父と同じ場所に眠ることになるなんて思いもしなかったですけれど」

 苦笑して言いながら、一方的にしゃべりすぎだと口をつぐむ。

 成明さんはなにも言わずに私の隣にやってきて、お墓をじっと見つめた後、こちらに視線を送ってきた。

「手を合わせても?」

「も、もちろんです」

 答えると成明さん手を合わせ、静かに目を閉じた。その横顔があまりにも綺麗で目を奪われる。けれど私も彼に倣って、両親の墓前に手を合わせた。
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