冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「正直、必死に祈りながらも、もうダメなんじゃないかって思いました。でも、すぐに三神先生が処置してくださって四十分後に心臓が動き出したときは、信じられなくて……」

 まるで奇跡だと言わんばかりに、お母さんは当時のことを語る。

 四日目にはECMOを離脱し、その後順調に回復していったそうだ。

「一歳の誕生日はICUで迎えたんですけれど、三神先生をはじめ看護師さんたちも、お祝いの言葉をかけに来てくださいましたよね」

 その光景を想像したら、なんだか微笑ましくなる。彼が誕生日を大事にする人なのはよくわかった。ただ治療するだけではなく成明さんは患者や家族に寄り添う人なんだ。

「本当に感謝しています。あのときはありがとうございました」

「翔太くん自身が頑張ったからですよ」

「だーれ?」

 頭を下げるお母さんに対し、翔太くんは不思議そうに尋ねた。お父さんが「翔太がお世話になった先生だよ」と説明する。今は近くの病院で定期的に検査を受けているらしい。

「すみません。プライベートでいらっしゃるときにお声がけをして」

 お母さんが私を気にしながら申し訳なさそうにするので、軽く頭を下げた。

「かまいませんよ。大きくなった翔太くんに会えてよかったです」

 お母さんは成明さんの手元に一度視線を遣り、そっと微笑んだ。

「先生、ご結婚されたんですね、おめでとうございます」

「ありがとうございます」

 彼の左手の薬指の指輪に気づいたのか。今日くらい指輪をつけてくるべきだったかと少し反省する。でも、あんな高価なものを失くしたら怖い。
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