冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
『形だけでも誠意は尽くす。それは約束する。だから、お互いに嫌いじゃなければいいんじゃないか』

 愛し合ったわけでも、お互いに相手との結婚を望んだわけでもない 。ただ、気持ちはどうであれ私も彼も、尊重し合っている自信はある。

「へぇ。じゃあ、医者の妻の肩書きが欲しかったの?」

「いい加減にしてください!」

 だめだ。相手のペースに呑まれている。こうやって前の会社で墓穴を掘ったんだ。

「い、石坂さんは関係ないでしょう」

 自分を奮い立たせ言い返す。ここは職場でもなければ、彼女はもう先輩でもない。成明さんの名誉にも関わることだ。

 けれど、石坂さんは声高に笑い、その反応に私の勢いはそがれてしまう。

「大ありよ。だって次に三神さんと結婚するのは私だもの!」

 さすがに動揺を隠せない。次? 混乱していると、石坂さんは得意げに髪を掻き上げた。

「三神さんのお父さまと懇意にしている人と伯父につながりができてね。その人伝いに、三神さんのお父さまに、あなたがどんな人物か話しておいたの」

 彼女が私をどんなふうに話したのかは容易に想像がつく。その話を受けて、三神さんのお父さんが私をどう思ったのか。

「驚いていたそうよ。その点、私はダミアノ製薬の重役の娘で、医師の伯父もいる。三神さんにとって……三神家にとって、こんないい縁談はないと思わない?」

 ぐっと足に力を入れて、声を振りしぼる。
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