冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 やっぱりね。うん。わかっていた。彼自身そう言っていたし……。

 翌日、カードキーで三神さんの部屋に入ると言っていた通り家主はおらず、リビングは昨日より心なしか散らかっている。

 ということは、あれから遅くまで彼はここらへんの資料や本を読みあさっていたらしい。さらには用意していた食事には一切手を付けた形跡がなく、冷蔵庫にそのままだった。

 手作りじゃないんだけど、そういう問題ではないのかな?

 昨日、三神さんに拒絶されたうえ、ほぼ依頼された内容を遂行できずに終わったことを浩明さんに正直に告げた。「もう行かなくていい」と言われるのかと思っていたけれど、詳細を聞いた浩明さんは意外にも「明日もよろしく頼むよ」と言ったのだ。

 とはいえ、メモなど残されているわけでもなく……。

 途方に暮れつつ書類や本を位置を変えないように意識し、リビングをはじめ彼の自室以外を徹底的に綺麗にしようと誓う。

 やっぱりお給料をもらう以上は、その分働かないと。

 意を決して作業に取りかかる。

 三神さんは医療従事者なのかな?

 散らばっている書類や無造作に置かれた本を揃えていて、医療関係のものばかりだと気づいた。忙しいのは無理ないのかもしれない。

 余計なこと、なのかな。でも……。

『お母さん、ちゃんと寝てる? ご飯だってほとんど食べてないじゃない』

『寝てるわよ、心配しないで。ダイエット中だから、食べる量を減らしてるの!』

 不意に脳裏に過ぎったやりとりに、胸が痛む。湧き上がりそうになる記憶と感情を無理やり抑え、無心で掃除に取りかかった。
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