冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「来週は当直と夜勤に加え、用事もあって遅い日が続く。夕飯は必要ない」

「わかりました。体調、気をつけてくださいね」

 予定を確認しながら、出勤前の成明さんを見送ろうと玄関まで共に進む。イレギュラーな勤務体系で毎回とはいかないからこそ、結婚してからタイミングさえあったら挨拶やこういうなにげないコミュニケーションを私は大事にしている。

 わざわざ見送らなくていい、と言っていた成明さんだけれど、最近はなにも言わなくなった。

 お弁当を受け取ってもらい、靴を履く彼の姿を見つめながら、迷いがちに口を開く。

「あの、成明さん……」

「どうした?」

 靴を履き終えた彼がこちらを向く。しかし途端に言葉が続かなくなった。

「あ、いいえ。なんでもありません!」

「最近どうした? どこか調子が悪いのか?」

 心配そうな面持ちで声をかけられ、私は慌てて首を横に振った。

「大丈夫です。すみません」

 笑顔で返したものの心は落ちつかない。何度も彼に石坂さんとの関係を聞こうとしたけれど、すんでのところで迷ってしまい、こうやって切り出せずにいた。

 なにも忙しいこのタイミングで聞かなくてもいいだろう。でも、そうやってずっと言い訳して聞けずにいる自分がいた。
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