冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「今日、病院に来るって言ってたか?」

「はい。少しだけさやかちゃんの顔を見に行こうと思ってます」

 さやかちゃんは成明さんに会うたびに「小夜さんは、次はいつ来てくれる?」と尋ねてくるそうだ。両親になかなか会えない寂しさや入院生活の暇つぶしだとしても、会いたいと思ってくれているのなら嬉しいし、彼女の望みを叶えたい。

「いってらっしゃい」

 気を取り直して笑顔で告げる。すると成明さんはどういうわけか私の方へ一歩近づき、さりげなく私の左手をとった。

 不意打ちで引っ込めそうになったものの指先に温もりが伝わり、体温が上昇しそうになる。成明さんはなにか言いたそうな面持ちで私を見つめてくる。

 しかし結局手を離して踵を返し、そのままなにも言わずにドアを開け出ていく。

 ドアがばたんと閉まる音がして、今のはなんだったのか混乱する。

 どうしたのかな? なにか言おうとしてなかった? もしかして石坂さんのことを……。

 悶々と思いつめそうになるのを必死で振り払う。彼の態度ひとつに、あれこれ考えて振り回されている自分が情けない。そして発言しかけてやめられると、こんなにも気になるものなのだと実感する。

 成明さんとちゃんと話そう。そのうえで彼に対する想いも伝えたい。そして、成明さんの気持ちも教えてほしい。
< 121 / 166 >

この作品をシェア

pagetop