冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「来週、楽しみにしていますね」

 ふと聞こえた声に意識を向けると、すぐそばを成明さんと石坂さんが通っていった。成明さんの表情は見えなかったが、石坂さんは上機嫌だ。

 来週って……。

 朝、勤務以外でも用事があって遅くなるから夕飯は必要ないと言っていた。それに電話での発言。やっぱり……石坂さんと会うんだ。

 ふたり並んでいた光景が頭を離れず、しばらくその場で立ちすくむ。

 さっさと帰ろうとしたが、万が一成明さんや石坂さんに鉢合わせしたら困ると思い、院内のコーヒーショップで一息つく。

 どうして私がコソコソしないといけないのか。自分の行動に呆れつつ、カップに口をつける。

 店内は比較的空いていて、ガラス張りになっている奥のカウンター席に腰を下ろし、外を眺める。

 成明さん自身から事実を聞くと決めたのに、石坂さんの話がどんどん現実味 を帯びてくる。こうなったら私が尋ねるより、成明さんに話を切り出される方が早いかもしれない。

「桑名?」

 無意識にため息をつくと、名字を呼ばれ振り返る。するとコーヒーとホットドッグを乗せたトレーを持ったスーツ姿の男性がこちらを見て目を丸くしていた。

小宮(こみや)さん?」

 思わず立ち上がる。彼は小宮省吾(しょうご)さん。ダミアノ製薬では営業をしていて、なにかと気にかけてもらった。

 私よりも先に会社を辞めたので、会うのはものすごく久しぶりだ。営業成績も常にトップで、辞める際は会社からも随分引き留められたって聞いたけれど……。
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