冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「久しぶりだな。にしても、どうした? 仕事? それともどこか具合が?」

 どちらの予想もはずれで、私は正直に答える。

「友達が入院しているのでお見舞いに来たんです」

「そっか。友達、早くよくなるといいな。あ、隣座っていい?」

 すぐに気遣いの言葉が出るのが彼らしい。断る理由はなく促すと、小宮さんはテーブルにトレーを置いた。

「仕事、どう?」

 久しぶりに会う元同僚に対しては無難な話題だ。けれど、少しだけ言葉を迷う。

「それが……ダミアノ製薬は辞めたんです」

 理由を聞かれたら、なんて答えようか。自然と次の質問を予測し、回答を考える。

「それはよかったと思う」

「え?」

 どうして?と聞かれるかと思ったが、小宮さんはどこか安堵めいた表情をしている。

「正直、ダミアノにいた頃はかなり強引なやり方で契約を取るように言われたし、上層部はグレーなことをしているって噂もあった。人事評価は個人の好みに左右されるから上に媚びを売る必要もあって嫌気が差したんだ」

 吐き捨てるように小宮さんは語る。直接営業の仕事をしていなかったので、彼の苦悩はわからないが、人事評価については思い当たる節があった。

「とくに石坂がいただろ?  最初は新入社員として真面目に仕事に取り組んでいたのに、あいつ、親がダミアノの重役だからって徐々に好き勝手やるようになって。森下課長なんてまったく注意もできず、石坂の言いなりでさ」

 まさか小宮さんが石坂さんにまで言及するとは思わなかった。
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