冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 彼が遠いところへ行ったと聞いてホッとしている。

「桑名は今、どこで働いているの?」

「今、仕事を探しているところなんです」

 湿っぽくならないようサラッと返す。結婚した旨を伝えるかどうか迷ったが、今は必要のない情報だ。

「だったら、コスマ薬品に来ないか?」

 まさかの申し出に、とっさに反応に困る。あまりにも思いつきみたいに言うから。それは顔にも出ていたらしい。

「営業事務、ちょうど今足りていない状況で。それに上司にダミアノにいた頃の桑名の仕事ぶりをなにげなく話したら、ぜひうちに来てほしいって言ってたから、引き抜こうかと本気で思っていたんだ。知り合い伝いに連絡先を聞こうとしたけれど、なかなか動けなかったから正直、運命を感じている」

 私の現状を知る前に、私の話題を第三者に出すことがあったのかと驚く。

 仕事に対してずっと報われない思いを抱え、最後の方は理不尽さだけを感じて逃げるように辞めた会社だったけれど、評価して、見ていてくれた人はちゃんといたんだ。

「よかったらまた俺のサポートをしてほしい」

 ひとまず答えは保留にしてもらい、小宮さんと連絡先を交換した。

 さやかちゃんのお見舞いのために足を運んだのが、いろいろありすぎて、重い頭を抱えながら病院をあとにする。

 コスマ薬品のこと、成明さんに相談しよう。そして石坂さんとの関係も聞くんだ。
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