冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 もろもろの用事を済ませてから帰路に着いたので、思ったよりも遅くなってしまった。

 夕飯の支度を終えた頃、成明さんは帰ってきたが、その顔色はどうも浮かない。疲れているからか、なにか仕事であったからなのか。職業柄、気が休まらないのは 無理もないし、ここに通い出した頃の成明さんの苛立ちもすごかった。

 けれど、そのときとはまた違う。夫婦として一緒に過ごしてきたからわかる。

 向かい合って座り食事をとりながらも必要最低限の会話しかなく、それでいて彼がなにかこちらに言いたそうにしているのが伝わってきた。

「どうかしましたか?」

「いや……」

 思いきって尋ねてみる。しかし成明さんからは歯切れの悪い返事があるだけだ。

 もしかして石坂さんの件で?

 もっと踏み込んでもいいものかと迷いながらも、確信が持てない。仕事の話なら話せないのは無理もないが、なんとなく違う気がする。

 思いきって切り出そうとしたら、成明さんのスマホ が鳴る。彼が電話を取ると、向こうから切羽詰まった声が聞こえてきた。どうやら仕事の電話らしい。こちらをちらっと見てから成明さんは自室に消えていく。

 もしかして病院に戻るのかな?

 ひとり取り残されたリビングで、私は静かに食器を下げ始めた。
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