冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「でもね、いろんな先生が力を合わせてどうやって治療をするか考えてくれているの。最後は手術しかないみたいなんだけど……」

「さやかちゃん」

 私は彼女の名前を呼んだ。こんな十二歳の少女にこちらを気遣わせてどうするのか。内心で自分を叱責し、さやかちゃんの目を真っすぐに見た。

「あのね、成っ、三神先生は家でもずっと手術の勉強をしているの」

 目を丸くするさやかちゃんに、私は力強く続ける。

「他のお医者さんの手術を見て、練習を重ねて、どういう手術をするのかノートにびっしり書いてある。患者さんを……さやかちゃんを助けることを一番に考えて、ずっと頑張っているから」

 不規則不摂生でめちゃくちゃな生活をして、自分を顧みない。他人に興味がなくて、手術のことばかり。分かり合えない冷たい人にしか思えなかった。けれど今は、成明さんがひとりでも多くの患者を救うために、必死なのを知ったから。

「だから大丈夫。さやかちゃんは絶対によくなる。三神先生を信じて、心配しないで」

 さやかちゃんを植物園に誘おうと思ったとき、不確かで下手なことは言えないと思った。母のときがそうだったから。良くなったら、退院したら。そんな未来が来ないことを母も私も知っていた。中途半端な慰めは傷つくだけだ。

 でも、今ならはっきりと言える。そっか。成明さんはこうやって患者に希望を持たせられる人なんだ。

「ありがとう、小夜さん」

 さやかちゃんが泣きそうになりながらも笑った。
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