冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「どうしました?」

「この部屋の……山崎さやかちゃんが、急に倒れて胸が苦しそうなんです」

 しどろもどろになりながらも答えると、すぐさま他の看護師も集まる。その中のひとりが医師を呼ぶように指示して電話をかける。

「さやかちゃん、聞こえる?」

「ちょっと触るよ、いいかな?」

 さやかちゃんの耳元で大きな声で看護師たちは声をかけ、彼女の様々なところを触りながら確かめていた。さっきまで苦しそうにしていたさやかちゃんは今はぐったりとしている。

 無意識に邪魔にならないようにと一歩下がる。廊下に出ると、スタッフがどんどん集まってきていた。

「意識反応なし。呼吸なし。上腕動脈で脈拍触知不能」

「胸骨圧迫します。測ってください」

「コードブルーかけます」

 目の前で起こっていることにまったく現実味がわかない。だって、今看護師さんが目の前でさやかちゃんにしているのは、心臓マッサージだ。

 さやかちゃんの華奢な胸元を、看護師さんが体重をかけて押している。 院内放送がどこか遠くのことのように聞こえて耳に入って来ない。

 心臓が、止まっている?

 母が亡くなったときのことを思いだし、体がガタガタと震えだした。

「小夜」

 横を見ると、成明さんが走ってきていた。

「さやかちゃんが……」

 蚊の鳴くような声しか出ない。成明さんはすぐさま病室に入る。
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