冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「先生、DC準備できました」

「ご家族に連絡して」

 ドアは開けたままだが、さやかちゃんの周りはカーテンのようなもので覆われ、周りから見えない状態になる。他の医師も集まってきて、現場はますます緊張感が高まっていた。

 さやかちゃん、どうなっちゃうの?

「心拍再開」

 不意に聞こえてきた言葉に顔を上げる。

「第二処置室へ」

「ご家族に同意書はいただいています」

 ホッとしたのも束の間、成明さんが指示しながら、機械につながれたさやかちゃんがストレッチャーに乗せられ運ばれていく。

 現実味がないまま私はこぼれそうになる涙を拭った。

 看護師さんに声をかけられ、家族ではないがさやかちゃんの知り合いだと話すと、手術室のフロア前にある待合い場所を案内された。

 看護師さんのやりとりで、さやかちゃんの家族が病院に向かっているのを聞き、せめて家族が到着するまでは、私がそばにいようと決意する。

 手術を待つのは初めてじゃない。父が倒れて病院に運ばれたとき、母に連れられ、やってきたのをぼんやりと覚えている。

 次は母の手術のとき。あのときは、伯父と伯母が来るまでひたすら母の無事を祈っていた。

 ぎゅっと手を握り、目を閉じた。

 今も、さやかちゃんのために祈るしかできない。あのときも神様に必死にお願いした。でも神様なんていなくて……。
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