冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
『手術は私と三神先生の共同作業なんだって』

 さやかちゃんの声が頭の中で再生される。

 そうだ。祈るのは神様に対してじゃない。頑張っているさやかちゃん、そして執刀医を務めている成明さんに対してだ。他にもさやかちゃんを助けるために多くの医療関係者が全力を尽くしている。

 信じないと。頑張っているさやかちゃんを、成明さんを。

 手術は五、六時間かかると看護師さんに教えてもらった。とはいえ、一度帰る気にもなれず、時間だけが過ぎていく。

 数時間経ってから、さやかちゃんの家族が到着した。妹さんが、さやかちゃんそっくりですぐにわかった。看護師さんから説明を受けるお母さんは涙を流し、お父さんが頷きながら聞いている。

 痛ましくて、不安な気持ちが伝わり、胸が締め付けられる。ここからは家族に任せるべきだ。

「あの、もしかして小夜さん……でしょうか?」

 席を立とうとしたら、お母さんに声をかけられ慌てて頭を下げた。どうして名前を、と思っていたら「さやかから聞いています」とお母さんは語り出した。

「お姉さんができたみたいだって、さやか喜んでいました。いつもありがとうございます」

 どうやらさやかちゃんは私のことをご家族に話していたらしい。それがくすぐったく、さやかちゃんにとって、少しは会っていて楽しい存在になっていたのなら嬉しく感じ、今はただ切ない。

「三神先生の奥さまだって聞きました」

「あ、はい」

 さらに切り出され、ぎこちなく答える。するとお母さんは軽く微笑んだ後、手術室へつながる扉に視線を遣った。
< 138 / 166 >

この作品をシェア

pagetop