冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「あの子、三神先生が大好きで。前の病院は嫌がっていたんですけれど、三神先生のことは信頼して、言うこともきくんです。私たち患者家族にも寄り添ってくださって……感謝しています」

 そう言うと、お母さんは再び涙を流し始めた。

 さやかちゃんの心臓は生まれつき疾患があり、成長を見ながら手術をする予定だったが、病状の症例が非常に少なく、さらには合併症の危険もあって難しい手術になると告げられていたらしい。

 手術したとしても、成功率は非常に低いと宣告されていたそうだ。

 話を聞いているうちに、絶望感に襲われそうになる。でも。

「……夫も、他の医療関係者の方も、さやかちゃん自身も、必死で戦っています。きっと、ううん。絶対に大丈夫です」

 さやかちゃんのお母さんに、というより自分に言い聞かせているようだった。さやかちゃんのお母さんが泣きながらも大きく頷く。目元はさやかちゃんに似ていると思った。

 途中、席を外しながらも、私はご家族と一緒にさやかちゃんを待たせてもらう。

 そして予定よりも一時間以上経過したところで、手術室から成明さんが出てきた。

「先生、娘は?」

 お母さんの問いかけに、成明さんは小さく頷いた。

「さやかちゃん、頑張りましたよ。手術は成功しました」

 その言葉でお母さんの瞳から涙が溢れ、お父さんは深々と頭を下げた。

 さやかちゃんはしばらくICUで過ごすことになるそうで、詳細は改めて説明すると伝えられたご家族は、さやかちゃんの顔を見ようと、手術フロアに入っていった。
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