冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 おそらく私は成明さんと別れるように言われるのだ。そして……。

 この場を去ってしまいたい衝動に駆られる。現実は変えられなくても、せめて成明さんとふたりで話したい。

 もう用件はわかったし、石坂さんたちと同じ席には座りたくなかった。

 私はすっと立ち上がる。

「小夜さんはこちらへ」

 ところが出ていこうとする私に、千八子さんから声がかかった。笑みを湛えたままだがどこか圧のある雰囲気に、私は振り払えずおとなしく千八子さんの隣に座った。

 私の座っていたソファに石坂さんと山本先生が座る。もうひとりの先生は立ったままだった。

 勝ち誇った笑みを浮かべている石坂さんが、口を開こうとした瞬間、ノック音が響きドアが開いた。

 顔を出したのは成明さんだった。彼を見て真っ先に石坂さんが反応する。

「成明さん、お疲れ様です」

 目の前のお父さんも三神先生だからか、さりげなく石坂さんが成明さんを名前で呼び、すぐさま山本先生が続く。

「三神先生。難しい心拍動下冠動脈バイパス術をこなされたと聞きましたよ。納富(のうどみ)先生は、優秀な医師が部下にいて羨ましいです」

 成明さんは石坂さんと山本先生を無視して、立ったままでいる白衣を着た年配の医師――納富先生を一瞥する。納富先生はゆっくりと頷き口を開いた。
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