冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「このたびは確認したいことがあってご足労おかけしました。山本医師は、ダミアノ製薬から多額の寄付金を受け取り私的に流用、その見返りとして七幸大学附属病院は、強心剤パンタレオンを多発注文した。これは事実で間違いないですね」

「なっ」

 山本先生は顔を真っ赤にして立ち上がった。

「なにを急に……誤解だ! 私はただ純粋に――」

「さらにあなたは、ダミアノ製薬の社員と共謀してパンタレオンの臨床研究の結果を改竄、効果を誇大にした論文を学会で発表した」

 成明さんの冷たい声が部屋に響き、今度は石坂さんが立ち上がった。

「違います。パンタレオンは本当にいい薬です」

「なら、どうして正規の手順を踏まない?」

 嫌悪感たっぷりに成明さんが吐き捨てる。すると成明さんから目配せされた千八子さんが書類を取り出した。

「こちら医療法人碧望会第一総合病院、外科部長の納富医師と三神医師、そしてそちらにいらっしゃるダミアノ製薬社員、石坂真子さんと七幸大学附属病院、第二外科山本医師の会話の記録です」

 弁護士の顔をした千八子さんが机の上に置いた紙には、石坂さんが成明さんと会ったときに交わされた会話が記されていた。

【パンタレオンを第一総合病院で使用してくださったら、それ相応の見返りは約束しますよ。七幸大学附属病院の赤池(あかいけ)准教授にも同じようにさせていただいています】

【私もこの薬のおかげでいい思いをさせてもらっておりまして……。第一総合病院さんもいかがでしょう? 三神先生、お父さまを超えるためには、手術で腕を上げるだけではなく、効果の予想される新薬で論文を書き業界の注目を集めることも必要では?】
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