冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 私に事情を話せなかったのも無理はない。

 でも、彼の妻として私はこのままでいいのかな?

 不意に成明さんと目が合い、反射的にすぐさま逸らす。納富先生は成明さんやお父さんと会話を交わして、先に去っていった。

 ドアが閉まった瞬間、千八子さん が口火を切る。

「ひとまず私たちの役目は終えたし、せっかく小夜さんと会えたんだもの。今晩食事でもどうかしら?」

「今日は帰る。緊急のオペで小夜もずっと付き添っていたんだ」

 明るい提案に成明さんがすげなく返すと、千八子さんは目を丸くした。

「あなたに?」

「まさか。患者と知り合いだったんだ」

 すると千八子さんが隣に座る私に顔を向けた。

「そう。それは小夜さんも心配だし大変だったわね」

 優しく労われ、つい首を横に振る。

「私は全然です。大変だったのは成明さんの方で……」

「それが成明の――医師の仕事ですもの」

 千八子さんは笑顔できっぱりと言い放った。そこには成明さんに対する信頼がしっかりとあって、ご両親が成明さんを息子として大事にしているのが伝わってくる。

 血のつながりなんて関係ない。成明さんはご両親から愛されている。それが自分のことのように嬉しいのは、彼が私にとっても大切な人だからだ。
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