冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 成明さんはまだすることがあるらしく、私は先にマンションに帰宅することにした。夕飯やお風呂の準備をして成明さんを迎えたい。ご両親とは後日改めて会うことになった。

「成明、生活力ゼロだから、小夜さんにご迷惑をかけているんじゃないかしら?」

「いえ、そんな……」

 別れ際に、千八子さんに不安げに尋ねられ、慌てて否定する。浩明さんもそうだったけれど、家族間で成明さんの生活の乱れぶりは共通認識らしい。

「いくら言っても聞かないし、ひとりで生きていくつもり?って言ったら、私や夫が勧める相手となら結婚してもいいなんて返してくるんだもの。結婚ってそんなものじゃないでしょ」

 あきれたように千八子さんが呟いた。すると成明さんのお父さんが静かに訂正する。

「正確には、私の勧める相手ではなく私の利益になる相手となら、と言ってきたんだ」

 ただ面倒だったのか、本気なのか。おそらく後者だ。成明さんは両親のためになるなら、そういう形で結婚していただろう。

「そんなことを息子に求めるほど、立場に困ってもいないし野心もない。逆に、そういった思いを抱かせたのが申し訳なくも感じてね」

 お父さんが物悲しそうに告げる。お父さんが成明さんを無理に誰かと結婚させようとしているわけではないのがわかって安心した。

 千八子さんは頷きながらも笑顔を作る。

「血のつながりなんて関係ない。親が子に求めるのは、幸せになってくれることよ。だから、成明が自分の意思で小夜さんと結婚するって決めたって聞いて私たちとても嬉しかったのよ」

 ズキリと胸が痛む。たしかに、私たちは互いの意思で結婚した。けれど、ご両親が成明さんに望んでいるようなものではないんだ。
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