冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 そもそもせっかく普通に会話できるようになったのに、わざわざ掘り起こすことではなかったかも。

 しばし沈黙が場を包み、疲れている成明さんに今、話すべきではなかったと後悔する。

「そ、そうですか。なら――」

 さっさと去ってしまおうと離れようとしたら、手を掴まれた。

「やっぱり少し怒っている」

 低い声で静かに訂正され、心臓が跳ねる。謝罪の言葉を再び告げようとする前に手を引かれ、よろけそうになりながら彼の腕の中に収まった。

「小夜が他の男のところへ行こうとするから」

 成明さんの発言に、虚を衝かれた。顔を上げたら至近距離で彼の瞳に掴まり、思わず息を呑む。成明さんは眉をひそめ、私の頬にそっと手を伸ばしてきた。

「どうしたって俺のものにならない」

 切なげで苦しそうな表情が目に映った次の瞬間、強く抱きしめられ成明さんの顔は見えなくなった。

「指輪、気に入らなかったのか?」

「え?」

 唐突な質問につい聞き返す。体勢も相まって頭が冷静に働かない。

「交流会につけていったきり、ずっとしまってあるだろ」

「そ、それは……」

 もともとアクセサリーをつける習慣もあまりなかったし、私に分不相応な指輪は、彼の妻だとアピールする必要があるときにつけるという認識だった。

 成明さんだってそれでいいと思っているって――。
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