冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「い、行きませんよ。そもそもなんで私が他の人のところに行くことになっているんですか」

 どちらかといえば、成明さんがこの結婚を終わらせようとしていたし、いつでも終わらせる気だったのでは?

「元同僚の男に誘われて、言われるがままコスマ薬品に行こうとしているだろ」

 まさかの指摘に、彼の顔を二度見する。私、小宮さんのことをそこまで話した?

 ぽかんとしている私に成明さんは意地悪そうな面持ちになる。

「随分、親しげに可愛らしい顔を向けていたじゃないか」

「み、見たんですか?」

 そこで合点がいく。病院内のカフェだし、小宮さんと並んで座っていたのは外からよく見える窓際のカウンターだ。

「誤解ですって。コスマ薬品に声をかけてもらえて嬉しかったですけど、彼自身に特別な感情はありません」

「へぇ」

 なんで私が悪いことをしたみたいになっているの。

「あんな顔を他の男に向けているのを見せられた挙げ句、その夜に就職先を決めて、〝この関係がずっと続くとは思わない〟だの〝他に結婚したい相手が現れたら〟なんて言われたら、勘繰りたくもなる」

「それは……成明さんが私との結婚を終わらせたいって言っていたから」

 小声でしどろもどろに言い訳する。そして長く引っかかっていた苦しさを吐き出していく。

「あと、石坂さんと成明さんがふたりで並んで歩いているの、私だって見ました」

 理由があったのは、今日の応接室でのやりとりでわかった。ふたりきりで会っていたわけではないのも、成明さんの気持ちが石坂さんにないのも。でも――。
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