冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「すごくお似合いで、いつか成明さんが、お父さまが勧める方と……もしくは自分で結婚したいと思う方が現れたら、私は必要なくなるんじゃないかって ……私は……両親がいないから、成明さんにとって結婚するのも別れるのも簡単で……」

 説明しながら、また泣きそうになる。言葉にできずにいると再度抱きしめられた。

「小夜との結婚を終わらせたいなんて一度も言っていない」

 よく通る声が耳元で聞こえ、回された腕に力が込められた。

「小夜の境遇は関係ない。そもそも終わらせる気なんてないんだ。だから今、こうして力ずくでもつなぎとめようとしている」

 彼の口調や声にいつもの落ち着きぶりはなく、顔が見えない分、必死さが伝わってくる。成明さんはさらに続ける。

「どうせ他人は、外見や経歴でしか判断しない。俺はそれを幼い頃から嫌というほど経験してきた。親がおらず施設育ちなのを見下されるのは日常茶飯事で、だからって同情されるのも御免だった。早く大人になりたくて、反骨精神でひたすら勉強に打ち込んだ」

 静かに語られる彼の過去はだいたいは知っているものの、こうして成明さんの胸の内を聞くのは初めてだ。

 私は身動ぎして、聞く態勢を取る。

「逆に今の両親に引き取られてからは、手のひらを返したような扱いだった。俺自身はなにもしていないのに、両親の息子として立派だ。両親の息子なら賢いと褒められる」

 自嘲的な声色なのは、彼が感じてきた理不尽さの表れなのかもしれない。
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