冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 柔らかい布団がかけられ、照明の落とされた部屋で彼と同じベッドの中で向き合っている状況に、今さらながら心臓が激しく脈打ちはじめた。

 大丈夫かと尋ねられて、返事したものの本当はいっぱいいっぱいだった。

 私、とんでもないことをしているのでは?

 そもそも疲れている成明さんに私のワガママでこんな気を遣わせてしまって……。

「あの、やっぱり成明さんひとりで――わっ」

 身を起こしながら離れようとすると、成明さんに腕を引かれ、再びベッドに戻された。そして彼にすっぽりと抱きしめられた状態になる。

「だめだ。離さない」

 耳元で力強く囁かれ、体が震える。

 薄いパジャマ越しに伝わる体温や厚い胸板の感触は、どうしても彼が男の人だと意識してしまう。

「嫌なのか?」

 きゅっと身を縮めていたら、打って変わって、わずかに不安を含んだ声で尋ねられる。私は小さく首を横に振った。

「嫌じゃないです。ただ、私……男の人とこんなふうに一緒に寝たことがなくて」

 正直に告げたら、わずかに回されていた腕の力が緩んだ。そのまま勢いに乗って続ける。

「もっと言うなら……キスもしたことがなかったんです」

 恥ずかしさで最後は蚊の鳴くような声になっていた。こうなってしまっては、成明さん相手に取り繕ってもしょうがない。

「……すみません」

 白状したものの居た堪れなさでつい謝ってしまう。こんなことを言われても、成明さんは困るだけだ。
< 158 / 166 >

この作品をシェア

pagetop