冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「や、だ」

 泣きそうになりながら、彼の肩を押すと成明さんは顔を上げた。

「本気で嫌なら止める」

 真剣な面持ちで告げられ、途端に私の方が目を泳がせる。

「……その言い方はずるいです」

「なぜ?」

 私は泣きそうになりながら答える。

「だって成明さんにされて嫌なことなんて……ひとつもないです」

 そもそも彼は、私が本気で嫌がることを絶対にしない。それは確信をもって言える。私の意思をどんなときも大事にしてくれる成明さんだから。

「敵わないな、小夜には」

 それは私の台詞じゃないのかな。

 そう返す前に成明さんが私を抱きしめた。

「今日はひとまず小夜が求めることしかしない」

 告げてから、誓うように唇を重ねられた。

「私、成明さんが好きです」

「それは嬉しい」

 成明さんの顔が本当に嬉しそうで、幸せそうで、満たされる。

『自分の人生なんだ。選ばれる側でいるな。選ぶ側でいろ』

 たくさんの悲しい出来事に翻弄され、選ぶ側なんて縁遠いと思っていたけれど、私の意思を尊重してくれる成明さんに出会って、自分で選んで決めていってもいいと教えてもらった。

 成明さんと一緒にいたい。ふたりで幸せになりたい。彼とこれからの人生を歩いていきたいの。

 彼に微笑み、キスをねだるとたっぷりと愛される口づけが再開する。

 成明さんの思惑通りかもしれないけれど、それでも私が自分で選んだ。彼といる未来を、彼に愛されることを。大好きな人に愛される幸せを噛みしめながら、私は成明さんの背中に腕を回した。
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